コーヒーの効能

大阪から東京に帰ってきてコーヒーを飲む頻度がますます増えた。大阪では一日2~3杯だったのが、今では4杯を下らない。大阪の仕事場はもっとも近いコーヒーショップまで5分以上歩かねばならなかった。しかし東京では仕事場の隣がスタバ。東京競馬場には馴染みのコーヒーショップもあるので、土日もコーヒーが止まらない。今日も今日とて、ずっと自宅で過ごしながら4杯目のコーヒーを飲みつつこのテキストを打っている。

コーヒーは17世紀になってアラビア半島から欧州に広まった。それが近代競馬の歴史とほぼ重なるのは偶然か。ともあれ当時の人は既にコーヒーに眠気を覚ます効果があることを知っていたようだ。科学的に言えばコーヒーに含まれるカフェインの作用。カフェインは脳を覚醒させ、集中力を高めてくれる。「ひらめき」はそのアウトプットにほかならない。

東京競馬場では、競馬場到着後に朝の一杯を嗜むことにしている。お世話になるのはフジビュースタンド1階「JOY」。3階「エクセルシオールカフェ」、6階「ときわ家」の3軒。ゆっくりできるのは「エクセルシオール」か「ときわ家」。ただ、この店で素晴らしいひらめきを得たという記憶はほとんどない。競馬場到着は10時過ぎだから「朝の一杯」というには遅過ぎなのだろう。「JOY」さんとは30年来の付き合い。馬券に行き詰まると自然と足が向く。

行き詰まったときにコーヒーを飲むことができるのは人間の特権。ウマではそうもいかない。カフェインと言えば古典的な禁止薬物の代表。世間の多くは競馬で「薬物」と聞けば、まずカフェインを想像するに違いない。いわゆる❝カマし❞である。尿検査で比較的簡単に発覚してしまう初歩的な手法で、1985年の宝塚記念を1番人気で4着に敗れたステートジャガーから検出されたことで一躍有名になった。近年では2011年のジャパンダートダービー3位入線後のクラーベセクレタから検出されて失格となっている。

2011年ジャパンダートダービーで3着のクラーベセクレタ戸崎圭太(右端)

とはいえカフェインやニコチンは輸入飼料の製造過程で混入するケースも多く、不可抗力で摂取してしまうことも少なくない。その一方で検出技術はますます高度化。昨今では満杯の50mプールにカフェインを一滴垂らしただけでも検出できる精度だそうだから、混入経路の特定は逆に困難さを増している。実際、クラーベセクレタの事案は警察が捜査したにもかかわらず迷宮入りとなった。

微量のカフェインがあれほど大きなウマの身体にどれほどの影響を及ぼすのか疑わしい気持ちもあるが、少なくとも私の脳にはさほど良い効果をもたらしていない。それは経験的にわかっている。量を増やしても気持ち悪くなるだけ。カフェインの過剰摂取は、めまいや心拍数の増加、不眠の原因になりかねない。要はコーヒーには飲むには、相応しい時間と場所があるということ。日々の生活の中にそれを探すことこそが、コーヒー屋さん巡りの醍醐味でもある。

 

***** 2024/2/23 *****