43年連続重賞勝利

中山メインのGⅢ・オーシャンSは1番人気のトウシンマカオが道中外目を回りながらも、4角先頭から後続を突き放して力の違いを見せつけた。2着にはビッグシーザーが差し込んでビッグアーサー産駒によるワンツーフィニッシュ。高松宮記念ではそのビッグアーサーとの父子制覇への期待が膨らむ。

2022年 オパールS トウシンマカオ鮫島克駿

長い歴史の中でも父系血脈の持続が至難であることに説明の必要はあるまい。一時代を築いた人気の主流父系であっても、3代目くらいになると活力を失い、勢いを得た別のラインに屈し姿を消していく。ヒンドスタン、ネヴァービートパーソロンノーザンテースト。天下無双に思えたサンデーサイレンスから続く父系とて安閑としてはいられない。

その中にあってテスコボーイからサクラユタカオーサクラバクシンオーを経てビッグアーサーへと流れゆく父系は世界的にも貴重な存在だ。この父系からの初重賞勝利は1972年の皐月賞ランドプリンス。そこから途切れることなく重賞を勝ち続け、今日のオーシャンSでその連続記録はなんと「43年」に伸びた。しかもワンツーフィニッシュで決めたのだから凄い。

2023年 マーガレットS ビッグシーザー・幸英明

トウシンマカオもビッグシーザーも、おそらく高松宮記念に向かう。日本が誇るこのサイアーラインから高松宮記念出走馬が出ること自体がそれだけで奇跡的だが、仮に優勝して、内国産馬による父子4代連続GⅠ制覇となれば過去に例がない。むろん勝てば種牡馬への道が開かれるわけだから、「5代連続」への期待も繋がる。

実は内国産馬にこだわらなければ「父子4代連続GⅠ制覇」は既に一組だけ前例がある。それを成し遂げたのもスプリンターのピクシーナイトであったのは偶然か。彼の2021年のスプリンターズS勝利で、グラスワンダースクリーンヒーロー、モーリスと続いた父子連続GⅠ制覇の記録は「4代」にまで広がった。

その父系は必ずしも日本の主流血脈ではないが、血統の歴史を振り返ればそこに魅力がある。グラスワンダー有馬記念連覇のイメージが強いが、実は1400mのGⅡを2勝し、朝日杯3歳Sをレコードで優勝したスピード馬。スクリーンヒーローの祖母ダイナアクトレスからのサポートも受けて磨きがかけられたその豊かなスピード能力は、マイルGⅠ4勝のモーリスを経てピクシーナイトに余すところなく伝えられたのであろう。

1993年 スプリンターズS サクラバクシンオー小島太

父系に伝わるスピード能力でいえば、サクラユタカオーサクラバクシンオービッグアーサーと続く父系も負けていない。毎日王冠天皇賞秋をともに日本レコードで連勝したサクラユタカオーの子のサクラバクシンオーが、1200mと1400mで日本レコードを叩き出したのはその象徴であろう。ビッグアーサーが勝った高松宮記念も1分6秒7もコースレコードだった。

最近の高松宮記念は道悪競馬になることが多いが、今年こそはスピードが生きる馬場になってくれないものか。「雨が降ったらサクラは消し」は我々が慣れ親しんだ古くからの格言。桶狭間に「内国産馬による父子4代連続GⅠ制覇」の桜を見たい。

 

***** 2024/3/2 *****