牝馬の皐月賞

中山3Rの場内実況をラジオNIKKEIの藤原菜々花アナウンサーが務めて話題となった。女性アナによるJRAの場内実況は初めてのこと。直線半ばで(実況的にも)ちょっとごちゃつくシーンもあったが、サラブレッドが駆ける映像と清涼感のある声のマッチングは聞いてて悪くない。なにより、これだけ女性のアナウンサーが活躍する時代である。「スポーツ実況は男性がやるもの」という固定概念は捨てるべきであろう。

ひな祭りに輝いた女性はアナウンサーだけではない。今日が短期免許の最終日となるレイチェル・キング騎手は今日だけで3勝の固め打ち。勝率1割超えは立派のひと言に尽きる。日本のファンのみならず厩舎関係者にも強いインパクトを残す2か月だった。この先もレギュラー参戦確実であろう。次の来日が今から楽しみでならない。

メインの弥生賞は6番人気のコスモキュランダが3角手前からの大マクりを決めて重賞初制覇を果たした。短期免許の先輩であるミルコ・デムーロ騎手にすれば面目躍如といったところか。皐月賞4勝ジョッキーが弥生賞を勝ったのだから本番でも軽くは扱えまい。どことなくダイワメジャーの雰囲気に似た雰囲気も漂う。

2004年 皐月賞 ダイワメジャー ミルコ・デムーロ

コスモキュランダの父アルアインは2017年の皐月賞馬。9番人気の伏兵だった。ではこの皐月賞で1番人気の支持を集めたのは何か。覚えておいでだろうか。

それは牝馬のファンディーナ。弥生賞スプリングS、若葉Sの優勝馬に加え、2歳チャンピオンも、3戦無敗のホープフルS勝ち馬も、共同通信杯、アーリントンC、毎日杯の優勝馬もことごとく出走した超ハイレベルの皐月賞に、敢えて挑んだディープインパクト牝馬をファンは1番人気に押し上げた。

デビュー以来3戦無敗という成績。フラワーカップでは5馬身差の独走。そして200万円の追加登録料を支払うという陣営の本気度を加味すれば分からないこともないが、結果は7着とホロ苦いものだった。それでも牡馬クラシックで牝馬が1番人気に推されたのは、1995年菊花賞ダンスパートナー以来22年ぶりのこと。それだけでも快挙と言えなくもない。

あれから7年が経ち、再び牝馬皐月賞の1番人気を務めそうな気配が漂っている。今日の弥生賞で2着だったシンエンペラーをホープフルSで子ども扱いしたレガレイラ。血統や鞍上も加味すれば、彼女が1番人気に押される可能性は高くなった。

これまで男性の領域だと思われていた領域で活躍する女性の姿は珍しくない時代。もし牝馬皐月賞を勝てば1948年のヒデヒカリ以来76年ぶりだが、オークスが秋に行われていた時代のことである。すなわち当時の3歳馬は性別に関係なくダービーを春の目標としていた。皐月賞はその前哨戦だから牝馬の参戦も珍しくはない。実際、1948年の皐月賞は7頭立てで行われたのだが、そのうち3頭が牝馬であった。さらに前年の皐月賞牝馬トキツカゼが勝っている。

2017年 共同通信杯 スワーヴリチャード 四位洋文

奇しくもレガレイラの父は共同通信杯を圧勝しながら皐月賞で1番人気をファンディーナに譲ったスワーヴリチャード。レガレイラには1番人気で皐月賞を優勝という快挙中の快挙を期待したい。

 

***** 2024/3/3 *****