欧州スプリント血統

高松宮記念は3年連続で雨に祟られた。道悪なのに直線では内目が残る馬場状態も前2年と同じ。雨も馬場もこの季節の中京の特性として受け入れるほかあるまい。自然の中で行うのが競馬である。

一方で期を画する出来事もあった。中でもサンデーレーシングによるJRAの全GⅠ26レースを完全制覇は壮挙であろう。それを海外のセールで購入した外国産馬で達成するあたり、ノーザンファームの総合力を感じないわけにいかない。会員として誇りに思う一方で、これでまた馬の値段が上がると思えばため息も出る。

インディアンリッジ

JRAでは Dark Angel 産駒によるGⅠ優勝は初めて。母の父 Indian Ridge というのも、JRAではイタリアンネオが活躍したくらいと記憶する。どちらも豊かなスピードを全面に押し出してスプリントからマイルでの活躍馬を送ってきたが、ここまでの欧州血統がJRAのスプリントGⅠを勝った例は最近ではめっきり減っていた。そういう意味でもマッドクールの勝利は大きい。

2022年 知立S マッドクール 藤岡康太

血統的には Ahonoora の4×3のクロスが注目される。自身はスプリントのGⅡとGⅢを勝った程度だが、種牡馬となってスプリンターの素質を産駒に余すところなく伝えることに成功した。1998年の高松宮記念を勝ったシンコウフォレストの母の父が Ahonoora である。思えばこの年の高松宮記念も雨だった。

父系曾祖父の Royal Applause は欧州の快速馬ワージプの直子で自身もジュライSを勝ったスプリンター。私は彼が4歳時に走って3着に敗れたアベイユ・ド・ロンシャン賞を現地で観戦していたが、その曾孫が日本でGⅠを取ったのだから競馬の世界は時の流れが早い。マッドクールもやがて種牡馬となる。あの日、パリ・ロンシャンで見た Royal Applause の玄孫の走りを見る日も近い。

1997年 アベイユ・ド・ロンシャン賞 ロイヤルアプローズ

むしろマッドクールの毛色が私にとっては重要だったりする。なにせ芦毛馬がJRAのGⅠを勝ったのは2018年のスプリンターズSを勝ったレッドファルクス以来6年ぶりの出来事だ。期待のガイアフォースは故障で休養中。これは困ったゾと思ったそばから、芦毛の活躍馬が出てくれた。マッドクールは5歳とはいえキャリアは12戦に過ぎない。まだまだ活躍する。種牡馬としての価値を上げて、めでたく社台スタリオンにスタッドインとなれば、我が国の芦毛もしばらく安泰だ。

 

***** 2024/3/25 *****