競馬大国

米国は競馬大国だと信じていたのたが、すべての地域がそうであるとは限らない。カウボーイのイメージが強いテキサス州でも生きた馬を見かけたのは南部オースティンで騎馬警官を見た一度きり。それも彼の地で開催中の世界最大の見本市「サウス・バイ・サウスウエスト」の演出のひとつに過ぎない。あとはホテルの装飾にチラホラ見かける程度。それでもセンスの高さはさすがだ。

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しかしダラスに移ってからはそれすらなくなった。かろうじて目に入ってきたのはNBAダラス・マーベリックスのイメージキャラクターだけ。かつてダラス近郊のローンスターパーク競馬場で頻繁に開催されていたはずのファシグ・ティプトン社のセールも、今では開催されていないとなればそれもやむを得まい。

早朝の便でシカゴへと移動した。気温3度。昨日のダラスが25度だから余計身体に応える。

シカゴには日本の競馬ファンにも知られた競馬場がある。いや「あった」と書いた方が正しいか。その名もアーリントン競馬場。1981年に創設されたアーリントンミリオンは、世界初の賞金総額100万ドルレースとして全世界の注目を集めた。芝よりダートを格上とする米国という事情を含めれば期を画する出来事だったと言って良い。このレースの優勝馬ジャパンカップに招待されるようになると徐々に日本でも注目度か高まり、1990年にオグリキャップが遠征を計画したことで、一気にその名は日本中に知れ渡った。

しかしその舞台となるアーリントン競馬場では2021年を最後に競馬開催が行われていない。その広大な敷地はNFLシカゴ・ベアーズに売却され、一部の建物はすでに解体されてしまっている。

新しい本拠地スタジアムを建築するであろうことは簡単に予測できた。現本拠地のソルジャー・フィールドは開場100周年。老朽化が激しく移転の議論を避けられる状況ではない。サッカーW杯とロス五輪を控えた昨今は空前のスタジアム建築ラッシュ。あのシービスケットが活躍した伝統のハリウッドパーク競馬場も廃止された。その跡地は「SoFiスタジアム」という収容人数70240人の最新スタジアムに生まれ変わっている。

しかし、アーリントン競馬場の跡地にスタジアム建設が着工した様子はまだ見られない。その背景には固定資産税評価額の認識齟齬や地元で沸き起こった反対運動があるという。そうこうする間にベアーズは現スタジアムのすぐ隣に新たな土地を購入した。そこが新スタジアム建設の本命なら、アーリントン競馬場の扱いはどうなるのか? だから「あった」と書いたほうが正しいかどうかすら未だ判然としないのである。


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来月の阪神競馬場ではアーリントンカップが今年も行われる。前身の「ペガサスステークス」から生まれ変わって30年以上が経過した。すっかりファンの耳に馴染んだレース名が変更になるという話はまだ聞こえて来ない。

 

***** 2024/3/15 *****