天災と逃げ馬は忘れた頃に

大方の野球ファンの視線は韓国・ソウルに向いているかもしれないが、東京にもようやく球春が到来。昨日から東京ドームでもオープン戦が始まった。今日のカードはデーゲームでの巨人×ロッテ。なんと4万人近くが詰めかけたという。この対戦カードで、しかもオープン戦であることを思えば珍しい。開幕を来週に控えて、ヴォルテージが上がっているのは選手だけではないようだ。

試合終了後後には一部の観客の協力を得て防災訓練が行われた。東京ドーム自体が指定避難施設に指定されているとはいえ、テロや火災に巻き込まれたら逃げるしかない。だからドームや消防の関係者などによる訓練は日ごろから行われている。しかし実際に災害が起こった際に群衆がどのような行動を取るか、そのシミュレーションは難しい。なので、最近では実際にお客さんを入れた状態で避難訓練を行う施設も出始めている。おそらく東京ドームでは初めての試みになるのではあるまいか。

競馬場でも大規模な防災訓練やテロ対策訓練は行われている。APEC首脳会議を控えた2010年には東京競馬場で、大規模なテロ対策訓練が実施された。参加したのは、警察、消防、そして自衛隊。競馬場の安全確保のための訓練ではなく、どちらかと言えば「訓練会場」として使われた印象が強い。

しかしテロリストが競馬場を狙う可能性はじゅうぶんある。なにせあの人混み。世界が注目する国際レースもある。GⅠレース発走直前ともなれば逃げ場もない。やはり観客を巻き込んだ避難訓練は必要であろう。

その点、大井競馬場ではすでに観客を巻き込んでの避難訓練の実績がある。ナイター開催の最終レース終了後に一部の指定席の利用客の協力を仰いで、係員の指示に従ってスタンドの外まで避難するというもの。参加してくれた観客には、お礼として出口で非常食セットが渡される。規模としては東京ドームには及ばないが、それでもやってみて気づかされることもたくさんあるそうだ。群衆行動の予測はそれほど難しい。13年前の3月11日午後2時46分、東日本大震災の発災のまさにその瞬間に東日本で開催をしていた唯一の競馬場として、こうした取り組みは続けていく価値がある。

東京ドームの避難訓練はつつがなく終了。参加者には謝礼として東京ドームシティ内で使える商品券が配られた。敷地内には場外馬券売り場もある。ならば、これで馬券でも買うか。そんな冗談を言ってたら、商品券の裏面に「これで勝馬投票券は買えません」とわざわざ書かれている。当たり前だと思うのだが、その念の入れように恐れ入った。

 

***** 2024/3/20 *****