牛乳を飲もう

久しぶりに中山競馬場に行くと入場時に牛乳が配られていた。

「牛乳を飲もうキャンペーン」というイベントの一環らしい。手渡されたのはよつ葉乳業さんの「特選北海道牛乳」。たしかTBSラジオでもよつ葉乳業さんと共同で「牛乳をみんなで飲もうキャンペーン」というイベントをやっていたはず。あれと同じだろうか。まあ、なんであれタダでモノがもらえるのはありがたい。

イベントの目的は牛乳の消費拡大だという。私自身、牛乳を飲まなくなって久しい。コーヒーも紅茶も「ミルク無し」を好むたちなので、むしろ「要らないモノ」という見方をしてしまっていた気もする。これは大いなる反省点であろう。カナダのゲルフ大学とトロント大学の共同研究によると、朝の牛乳1杯が脳をストレスから守り、集中力を維持するらしい。つまり競馬場に着いたら、駆け付け一杯の牛乳がその日の勝敗を分けるのである。

そんなことを思いながら6レースのパドックに立つと、牛乳のごとき純白の一頭が目に飛び込んできた。

なんとその名もギュウニュウ。慌てて馬名の意味を調べると、そのまま「牛乳」とある。ダンカークの産駒だから芦毛は父親譲りであろう。それでも3歳春でこの白さは珍しい。牛乳を連想する気持ちもわかる。しかしそのまま馬名にする勇気は私にはない。

むかし川崎に「ミルク」という馬がいた。スペクタクルが勝った京浜盃に出ている。しかし毛色は黒鹿毛。今にして思えばどういう意図での命名だったのか分からない。

ジュース、サイダー、ジンジャーエール、レモネード、クリームソーダ、ホットコーヒーにカプチーノ。まるで喫茶店のメニューをそのまま書き写したとしか思えない馬名は他にもある。それでも「ミルク」ではなく敢えて「ギュウニュウ」にしたセンスには舌を巻く。だってもしこの馬が活躍して生産牧場が話題になったら「ギュウニュウの生産牧場」として紹介されるわけですからね。普通に聞いたら十勝当たりの酪農家さんのイメージしか浮かばないじゃないですか。

それにしても牛乳が配られたばかりの競馬場でギュウニュウが走るのは奇跡的だ。よつ葉の牛乳配布は1か月以上前に決まっていたわけだし、よもやギュウニュウにしてもそれに合わせてローテを決めたりはすまい。紙パックの牛乳を片手にギュウニュウに視線を送るパドックは、私の長い競馬キャリアの中でもっともシュールな景色だったと思う。ちなみにレースは1番人気クーアフュルストが7馬身差の圧勝。ギュウニュウは11着に終わったが、その白く輝く馬体は一番目立っていた。

 

***** 2024/3/30 *****