大河と桜

穏やかな陽気に誘われて久しぶりに京都を訪れた。伏見区の磨墨寺はまたの名を「桜寺」とも称され、薄墨色に咲く墨染桜で知られる。現在の墨染桜は数えて4代目。小ぶりではあるが立派な花を咲かせていた。そんなに広くない境内には、それ以外にも様々な桜が今を盛りと花を咲かせている。「桜寺」の看板に偽りはない。


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深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染めに咲け

平安時代前期の歌人・上野岑雄が太政大臣藤原基経の死を悼んだ歌である。古今集に載ったこの歌を、紫式部は「源氏物語」の中で、二条院の桜を見て藤壺を偲ぶ光源氏の「今年ばかりは」というセリフに変えて引用した。たまに京都に来ると、どうしても頭の中が大河ドラマに侵されていけない。

桜を観ながらぶらぶら歩いていると「大河」の看板が目に入った。主人は伝説の「るみばあちゃん」の最後のお弟子さん。うどん好きならその名を知らぬ人はいまい。びよーんと伸びる柔軟性と噛めばクンと押し返してくる絶妙なコシ。住宅街の真ん中で讃岐の神髄に出会えるあたりは、京都の底力であろう。「大河」を名乗るだけのことはある。

 

 

藤森駅から東福寺駅まで京阪電車で移動して山道を登ること15分。泉桶寺は昨年もこの季節に訪れた覚えがある。気に入っている理由は人の少なさ。こんな桜の季節でも観光客の姿はまばらで、外国人の姿はほとんど見かけない。


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泉桶寺は皇室の菩提寺として有名。そのため「御寺」とも称される。清少納言の父・清原元輔の旧居でもあり、清少納言も晩年をこの近くで過ごしたらしい。そのことにちなむのだろう。境内には百人一首にも採られた有名な歌碑が建っている。


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夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ

ふと、そのへんの木陰からファーストサマーウイカさんが姿を現すような錯覚を覚えた。やはり大河が頭から離れない。昨日は東京の桜で今日は京都の桜を見た。明日は仁川の桜を見よう。勝負ジョッキーは角田大河騎手で決まりだ。

 

***** 2024/4/5 *****