ままならぬ馬券と桜

大阪ではソメイヨシノが満開を迎えた。満開の観測は平年より2日遅く、昨年に比べれば10日遅いという。ところが阪急電車に揺られて30分ほど離れた阪神競馬場は満開には程遠い。品種によっては満開近い木もあるが、ソメイヨシノは五分咲きといったところか。今日の暖かさの後押しを受けて多少は咲き進むだろうが、明日の桜花賞は「満開の桜の下」というわけにはいかなそうだ。

阪神の桜は根元に氷を撒いて開花を遅らせとるんや。今年はそれが裏目に出たんやろな」

背後から訳知り風の声が聞こえて来た。JRAがレース結果を操作しているという都市伝説はさすがに聞かなくなったが、桜の開花時期くらいなら操作できると信じる人がまだ一定数いるということだ。毎年、関西各地の桜が散ったあとに、阪神の桜だけが満開を迎えるのがその証だというのである。

桜花賞当日の阪神に毎年通い詰めるような熱心なファンなら納得しそうな話だが、残念ながらこれも都市伝説の域を出ない。JRAもそれを明確に否定する。六甲おろしが吹きつける競馬場は周辺よりも若干寒く、桜も遅めに咲く傾向がある。昨年の桜花賞はほとんど花が散った状態の「散り三分」。ジェンティルドンナが勝った2012年は逆に開花したばかりだった。開花時期を調整できるならそんなことはなるまい。それに比べれば今年の桜花賞は恵まれた方。明日は美しい競馬が見られるはずだ。

とはいえ、JRAも開花時期の調整に関心がないわけではない。今から30年ほど前に開花を操作できるかどうかを実験したことがあるにはあったそうだ。先の都市伝説はこの実験の話が誤って広まったのであろう。実際に氷を撒いたり、逆に暖めたりしてみたそうだが、開花時期への影響は皆無だったという。そりゃそうですよね。開花調整ができるなら、競馬よりももっと切実なイベントが黙ってはいまい。

そもそも特定の日に人為的に満開にした桜に日本人の心は動かされるのだろうか。予想がままならない桜の魅力は競馬にも通じる。今日のマスクトディーヴァはドンピシャのスタート。最内枠は蟻地獄と踏んだ筆者の予想を嘲笑うかのような快勝だった。

 

***** 2024/4/6 *****