彼岸の雪

季節外れの大雪で昨日の浦和開催が飛んだ。浦和の馬場はシャーベット状の雪が一面を覆って砂が見えない状態だったという。危なくて競馬どころではなかろう。

競馬に限らず、あらゆるスポーツイベントにおける最優先事項はプレイヤーと観客の安全確保だ。昨日の都心では1センチの積雪を観測。神宮球場のヤクルト対阪神のオープン戦は早々に中止が発表された。雪は昼過ぎにやんだが、冷たい強風が吹き荒れて、とても野球どころではない。こういうときドームのありがたさを実感する。MLBの開幕2戦目は雪や風を忘れる盛り上がりを見せた。もし屋外球場だったら、こうはならなかったかもしれない。

近年はかつての気象常識がすっかり通用しなくなった。季節外れの大雪や寒さのみならず、ゲリラ豪雨や竜巻、そして夏の殺人的な暑さから選手観客をどう守るか。最高のパフォーマンス発揮と快適な観戦を担保できる環境を提供できなければ、もはやスポーツイベントは開催できない時代になりつつある。そのための確実な対策のひとつが競技施設のドーム化・屋内化であろう。

とはいえ「馬」という自然が主役の競馬にドームは似つかわしくない。馬場状態や天候をそのまま受け入れるのも競馬ならでは。仮にすべての競馬が良馬場で行われては予想の醍醐味も低減するし、何より競馬の多様性が失われてしまいかねない。「雨馬」や「道悪の鬼」なんて言葉も死語となってしまう。それは嫌だから、気象事由による競馬中止に文句は言えない。

それでも今回の浦和の対応には「おや?」と思ったことがある。最近流行りの「土曜に無観客で代替開催」ではなく「代替開催無し」とされた。つまり予定されていた重賞・ネクストスター東日本も延期ではなく中止。この時季の3歳重賞の直前中止は影響が大きい。馬の将来をも左右しかねない。

浦和の重賞が中止されたケースとしては、2011年の桜花賞の例がある。当時の有力馬の一頭だったナターレ桜花賞に向けて早々に御神本訓史騎手を確保。順調に調整を続けていたが、その桜花賞は直前で中止の憂き目を見た。むろん東日本大震災の影響である。

馬にとっては一生に一度の大舞台である。それどころか何世代にも及ぶ夢の舞台であったかもしれない。そんな夢と努力は一瞬にして水泡と化した。しかし自然相手ではどうしようもない。なんとか桜花賞だけでも延期して実施できないか。一部の関係者が奔走したものの、この年の桜花賞が行われることはついに無かった。今年の桜花賞は「第71回」だが、実際に行われた回数としては70回目が正しい。2011年に行われるはずだった「第57回」が、ぽっかり空いたまま存在しないのである。

2025年 フレッシュスター特別 リヴェルベロ 木間塚龍馬

今日の桜花賞に出走したリヴェルベロは、そのナターレの姪にあたる。11番人気で3着に粘ったレースぶりに、叔母の執念を見た気がした。それも無事にレースが行われたからこそ。引退を発表したミスターピンクこと内田利雄騎手にとって、昨日のネクストスター東日本は騎手生活最後の重賞騎乗だったかもしれない。

14年前の震災時には、一度は「中止」と発表されたダイオライト記念が、2か月遅れで実施されたという例もある。同じように次の浦和開催に予定されている1400mの3歳準重賞・アヴニール賞を、ネクストスター東日本として実施することは考えられないだろうか。人馬の安全確保のために開催取り止めの判断はためらわれるべきではない。その一方で、人馬の目標であるはずの重賞レースは延期してでも施行して欲しいと思うがゆえである。

 

***** 2025/3/20 *****