東京の桜は既に満開だが、東京より少し遅れて開花した中山競馬場は今週末あたりにちょうど見頃を迎えそうだ。四季折々の景色に彩られる日本の競馬が、もっとも美しさを増す季節であろう。
最近では9レースや10レースに組まれることの多いブラッドストーンSが、4月第1土曜日の中山メインを張った時代がある。当時の条件は古馬オーブンによる3200m戦。季節柄、満開の桜の下で行われることが多かった。ゆえに印象も強い。桜が咲き誇る3~4コーナーを2度通り、しかもゆったりと流れる3200mは、花見競馬にもってこいだった。ブラッドストーンSに限らず中山大障害(春)が「花の大障害」の異名をとったのも、レース自体がゆったりと流れるからであろう。
騎手の優劣が現れやすい長距離戦だから、勝利ジョッキーには岡部幸雄やマイケル・ロバーツという名が目立つ。今ひとつ勝ち切れないレースが続いていたダイイチジョイフルを、3角からの捲り一閃で見事勝利に導いたロバーツ騎手の騎乗は見事だったし、そのダイイチジョイフルを封じて逃げ切った1993年の岡部騎手の手綱さばきもさすがと言うほかはない。キリスパートの真っ白な馬体が満開の桜を背に走る姿は、それはそれは美しかった。

自分の土俵で輝きを取り戻したステイヤーたちの中には、ここをステップに勇躍淀の3200mへと向かった馬もいる。さすがにそこで勝てるほど競馬は甘くはないわけだが、格下のステイヤーが最高目標の天皇賞に挑戦するためのひとつの道として、重要な役割を担っていたように思う。
2200mに距離が短縮されたのが1997年のこと。その後、出走条件が準オープンになったのはまだいいとしても、ダートの1200mというまるで正反対の条件となったのは、やはり時代の流れか。
芝3200m当時の出走頭数がほぼ毎年6~7頭だったのに対し、ダート1200m変更後の平均頭数は15.7頭である。番組的には、これほど見事な条件変更はあるまい。米国系血統全盛のご時世では仕方のないことではあるが、このままではいつの日か春の天皇賞がダート1200mで行われるようになってしまうのではないかと余計な心配をしてしまう。
桜並木から遠く離れたダートの1200mでは、レースに桜は視界に入らない。それでも敢えて桜に目を向けてみたところで、その一瞬の間にレースが決してしまうこともあろう。そもそも中山では珍しい芝3200mという特殊なコース形態ゆえの楽しみもあった。楽しく、そして美しい競馬の点景が、今となっては懐かしい。
***** 2025/4/3 *****