クールビズ始まる

JRAは開催代わり。今週末から世間より一足早くJRA全競馬場でクールビズがスタートする。本来ならネクタイの着用が求められる馬主エリアやウイナーズサークルでの口取り撮影はノーネクタイでも構わない。ただし例外もある。それが天皇賞(春)当日の京都競馬場日本ダービー当日の東京競馬場。両レースの伝統と格式にクールビズはそぐわない。

もちろんクールビズと言っても何を着ても良いわけではない。ポロシャツ、Tシャツ、ショートパンツ、ジーンズ、サンダル等はNG。男性はワイシャツ着用、女性はそれに準じる服装が求められる。誤解されやすいのだがビジネスカジュアルとクールビズは違う。

今日は久しぶりに口取りに立つかもしれない事情があり、私もジャケット、ワイシャツ、ネクタイ、革靴といういで立ちで浦和競馬場に足を運んだ。

かつてはサンダル履きで口取りに参加している人もいた。「地方なら気軽に馬を持てる」という思いで参加している人にしてみればそれが当然かもしれない。だが、JRAであれ地方であれ口取り式とはセレモニーであり、そうした場にはそれにふさわしい服装というものがある。いやそれ以前の問題として、愛馬の出走に際しぞんざいな服装でいることは、命を賭して走る馬に対し礼を失する行為に思えてならない。

ファンについても同じことが言える。命の次に大事な金を賭ける場に臨むにあたって、軽々しい服装では大勝利など夢のまた夢。Tシャツにジーンズという格好では、首尾よく帯封をせしめても、それをしまう場所がないではないか。

戦前の競馬ファンは、中折れ帽子をかぶって競馬場に足を運ぶのが常であった。身なりを整える仕上げとして、帽子を日常的にかぶっていた時代のことである。今では日本ダービー当日の馬主席くらいでしか見ることのできぬ光景だ。

当時の競馬場では、馬主エリアでなくとも、ネクタイもしくは袴の着用が義務づけられていた。それで競馬場周辺には、貸しネクタイや貸し袴の店が繁盛していたとも聞く。今も各競馬場の馬主受付には貸しネクタイコーナーがあり、貸し出し簿をチラ見する限り思いのほか利用頻度は高い。

最高の格式を誇った天皇賞ともなれば、新品の紋付袴を用意する馬主もいた。むろん、表彰式に対する配慮である。すると「あの馬主は式服を用意しているから勝負気配だ!」などという裏情報が場内を駆け巡ったりもしたという。

20年ほど前、社台グループのパーティーで挨拶に立った元衆院議長・河野洋平氏が、むかし天皇賞に地方出身馬が勝った時、長靴履きで表彰台に上がった関係者がいたエピソードを紹介した。その上で、「最近は中央はもちろん地方競馬でも関係者の身なりがきちんとしてきた。こういうことの積み重ねで、競馬が良くなり、ひいては天皇陛下の競馬場御行幸が実現することにもつながった」と祝辞を述べられた。私は氏の見解に大きく頷く。ファンや関係者の外見がその競技のイメージに与える影響は小さくはない。

 

***** 2024/4/18 *****