たかが1ハロン、されど

今年のプロキオンSは小倉で行われるためダート1700mが舞台となる。去年は中京1400mだが、その前の2年間はやはり小倉1700mだった。こうなると、どちらが本来の距離なのか分からなくなってくる。

もちろんダート短距離路線の一角を担うレースなのだから1400mが正しい。マテラスカイ、シルクフォーチュンケイアイガーベラブロードアピール。過去の優勝馬にもダートの韋駄天たちが名を連ねている。昨年はドンフランキーとリメイクのスプリンター対決で大いに盛り上がった。

2023年 プロキオンS ドンフランキー 池添謙一

先週土曜の小倉10R熊本城特別(ダート1700m)は、3歳馬フラムリンガルが1番人気。しかしダートでは1400m以外のレースを経験したことがない。「それでも小回りならなんとかこなしてくれないか」。陣営は希望にも近いコメントを残していたが、結果9着に沈んだ。

阪神競馬場改修の影響で、今年は中京と小倉の開催順が入れ替わっている。そのせいで、函館、福島、小倉という似たような競馬場での3場開催が発生した。よりによってJRA10場の中で距離設定のバリエーションワースト3での開催が重なったのは、一部の馬たちにとって悲劇でしかなかろう。サウスポーは夏休み。純粋なマイラーもしばらく出番がない。

競馬の根幹距離であるはずの1600mが1か月間も消えるというのは異常事態である。代わりに用意されたのはローカル競馬場の「根幹距離」とも言える1800m。先週土曜の小倉メイン博多Sもこの舞台で行われた。

2024年 博多S アルジーヌ 西村淳也

勝ったのは4歳牝馬のアルジーヌ。前走は中京の1600m戦で追い込み届かず5着に敗れたが、小倉の1800mに変わったここでは道中後方待機から3角マクリの豪快な競馬で突き抜けている。自身は1800mで3勝目。それも函館と小倉だからよほど小回り1800mが合うのであろう。クイーンSに出てくれば面白い存在になりそうだ。

アルジーヌの母キャトルフィーユは10年前にそのクイーンSを勝っている。その姉レディアルバローザは中山牝馬Sを連覇。妹エンジェルフェイスはフラワーCを勝っている。こうして見れば、アルジーヌが小回り1800mを得意としたところでとくだん不思議ではない。かように、たった1ハロンが得手不得手を分けることはよくある。

2012年 中山牝馬S レディアルバローサ 福永祐一

サマーマイルシリーズ第二戦の中京記念も芝1800mでの実施。しかしワンターンの1600mとコーナー4つの1800mで求められる能力が同じであるはずがない。それを承知で小倉と中京の日程を入れ替えたのは、中京の芝の生育管理上の都合である。コース保全は馬の安全に直接関わる重要案件だが、それを優先することで、割を食う馬がいることも忘れないでおきたい。そもそもマイル戦を施行しにくい夏のローカルで、わざわざマイルシリーズを行う必要性があるのだろうか。たかが1ハロンを軽視してはいけない。

 

***** 2024/7/5 *****