「それにしても暑いなー」
「こんな日は上等なそうめんをツルっと食べたいねぇ」
昼に埼玉の父親宅に足を運び、親兄弟らとこんな会話をしてから帰宅すると、とある馬主さんからのお中元が届いていた。なんと高級素麺「揖保乃糸」の中でも特級品とされる「おおひね」ではないか!
やった、やった! 一日早く七夕の願いごとが叶ってしまった。毎度恐縮してしまうのは、この馬主さんの贈り物チョイスのセンス。こんなセンスが私にも欲しいが、これはいくら七夕様にお願いしても叶わぬ夢であろう。
明日7月7日は七夕であると同時に「そうめんの日」でもある。昔は七夕にはそうめんを食べる風習があった。平安時代から宮中での七夕の行事にそうめんが供えられたほか、江戸時代にはそうめんを糸に見立て、裁縫の上達を願って食べたという。もちろん機を織る織姫にあやかってのことだ。
良いそうめんは冬場の厳寒期に作られる。しかしすぐに出荷されるわけではない。木箱の中で時間をかけて熟成させることで美味しさが増す。丸一年間寝かせたものが「ひね」。もう一年寝かせれば「おおひね」と呼ばれる。寝かせることで独特の香りが醸し出され、滑らかさが増し、コシも強くなるのだそうだ。
さっそくいただいてみた。なるほど美味い。昼間から食べたいと思っていたぶん余計に美味い。2束はあっという間に胃袋に収まった。これで裁縫も上達するに違いない。と言っても最近は血統表に織姫(=ベガ)の名前を見る機会もめっきり減ってしまった。シュトラウスにはもう一花とはいわず、願わくば二花も三花も咲かせてほしい。
それにしても願いを短冊に書いたわけでもなく、「食べたい」と口にしただけで叶ってしまうとは、七夕とはなんと素晴らしい風習であろうか。ならば来年の七夕も父親宅に行って、
「それにしても暑いなー」
「こんな日はエピファネイアの1歳馬が欲しくなるねぇ」
なんて会話をしてみることにしよう。無理だとは思うが、あくまでも念のため。
***** 2024/7/6 *****