パリ五輪日記⑪ あー、夏休み

パリ五輪馬術競技の障碍飛越で、日本からただ一人決勝進出を果たしたハーゼ柴山選手は途中棄権に終わった。残念だが、馬のことを思えばやむを得まい。

これで五輪の馬術競技は終了だが、JRAの競馬は開催替わり。今週から中京が加わって3場開催に戻る。でも、その3場というのが新潟、中京、札幌の東日本3場のみだから西日本のファンにとっては寂しい。今週土曜や来週土曜は、西日本で開催される競馬場は佐賀一場のみ。ナマ観戦派は遠征か夏休みを迫られることになろう。

そもそも競馬界全体が夏休みモードである。高知は今週から1か月間の休催。2回新潟では、日中に3時間半の休みを設けて暑熱対策とした。その効果は絶大で4日間合計の入場人員は 56,191人で前年比 23.5%増、売上も 573億3418万9300円で前年比 11.0%増と、ともに前年から大幅に増加している。ただ、今回に関してはモノ珍しさも手伝っての数字。鵜呑みにはできない。夕方の競馬場周辺で大渋滞が発生したり、ジョッキーが札幌に移動するのに支障をきたした例もある。

夏休みを取るジョッキーも今年は多い。クリストフ・ルメール騎手の4週間を筆頭に、川田将雅柴田善臣津村明秀、菅原明良といったトップ騎手たちが、それぞれ2~3週間の休養を取った。理由はリフレッシュだったり治療だったりと様々。加えて岩田望来騎手と田口貫太郎騎手はフランスに長期滞在している。これも一種の夏休みの過ごし方であろう。計画的に仕事を休んで、ほかの為すべきことを為す時間が休暇。酒気帯び運転や芝コース蹂躙によって突然強制された休みを「夏休み」と呼ぶことはできまい。

それにしても、ジョッキーという職業はプロのアスリートでありながら、周囲に体調をチェックしてくれるような人がいないという点で稀有な存在ではないか。例えばプロ野球やJリーグの選手なら、トレーナーやドクター、栄養士といった専門家が常に傍らにいてくれるが、そういう存在の人はなく、すべて自らで管理しなければならないのである。

しかも、プロスポーツの中でも珍しいことに日本の競馬にはオフシーズンというものがない。プロ野球でもJリーグでも、オフシーズンが少なくとも2か月以上あることを思えば、競馬の興行スケジュールは異質だ。ならば自分でオフを作るしかないと考えるのも当然であろう。

盛夏の暑熱対策のみならず、厳冬期の事故防止や競馬そのもののマンネリ化防止という観点から、JRAにおけるシーズンオフ導入論はずっと前から存在していた。だが一方で、毎週のように除外馬が溢れる状況を目の当たりにすれば、おいそれと「夏はお休み」などと言い出せる状況でもない。むしろ一部では開催日数増加への圧力すらある。

先述したように高知競馬は今週から1か月間の休催に踏み切った。その間、他の競馬場に遠征する馬がいないわけではないが、大半の在厩馬たちは競馬を走ることはない。むろん騎手たちもお休み。それで喜ぶ人もいるかもしれないが困る人もいるだろう。なにせその間、馬主と馬主と騎手には実入りない。開催を止めることなくシーズンオフ感を出すという観点では、JRA新潟の開催時間変更の取り組みは画期的だったと思えるのである。

 

***** 2024/8/6 *****