【太麺礼讃④】うどん家こむぎの小海老ごぼうかき揚げうどん

「まるでうどん!」と初めての人が驚くぶっとい蕎麦でお馴染みの門別「いずみ食堂」にも、うどんのメニューはある。うどんは細麺と太麺のいずれかを選ぶことができるようだが、注文の声を聞くことはあまりない。かつてはラーメン王国、そして今ではミシュランガイドに蕎麦店が大挙して掲載される北海道において、うどんの文化はさほど根付いていないようにも感じられていた。

ところが、道産小麦の消費拡大を目指す北海道の政策と歩調を合わせるかのように、最近になって道産小麦にこだわったうどん店の話題を聞くことが増えた気がする。千歳にそんな一軒があると聞いて行ってみた。

千歳駅から徒歩10分。その名も「千歳饂飩」は、うどん専門店でありながら豊富なメニューで、地元の家族連れなどにも人気の一軒。その麺は思いのほか細いのだが、それを感じさせぬ強靭なコシに驚かされた。絹を思わせるツルっと滑らかな歯触りは官能的ですらある。製法が気になるうどんというのも久しぶりだが、観光客がぶらりと立ち寄るには立地的に難しい。札幌競馬場の近くに支店でも出してくれないだろうか。写真はゴボウ天おろしぶっかけうどん。細切りのゴボウよりも、うどんの麺はさらに細い。

その札幌競馬場の近くにも道産小麦にこだわる一軒が暖簾を掲げている。競馬場からJR八軒駅方面へと歩いたあたりに暖簾を掲げる「うどん家こむぎ」。太麺をテーマにするなら、こちらの方が良かろう。

香川での修行経験を持つ店主が2005年にオープン。道産小麦「きたほなみ」を100%使い2日間寝かせた麺はモチモチ感が素晴らしく、南茅部の真昆布を中心にこだわり抜いた素材から取るダシは風味満点。天ぷらの種類も豊富で、注文した「小海老ごぼうかき揚げうどん」は、丼から溢れんばかりの巨大なかき揚げが丼を覆いつくしている。うどんもダシも天ぷらも隙がない。これは参った。

レースのひとつくらい犠牲にしても食べておかねばならん一杯だと思うのだが、ひとつ難を挙げれば札幌競馬場から直線距離では近いのに、徒歩ルートがえらく遠回りになるところか。方向的にはゴール前の直線の先にあるイメージ。スタンドから行くなら厩舎地区を抜けていくのが一番近いのだが、そうもいかないからぐるりと大回りを与儀なくされる。実際のところ、レースふたつは犠牲にしなければこの店には行けない。中山みたいに1コーナー寄りにも入場ゲートがあればと、つくづく思った。

うどん用の道産小麦と言えば、かつては「ホクシン」という銘柄を見聞きしたが、今では「きたほなみ」が主流のようだ。ホクシンに比べモチモチ感が強い「きたほなみ」の方がうどんに向いているのかもしれないが、10年前に食べ比べた印象では「きたほなみ」の方が小麦の味が若干弱かった覚えがある。しかし「うどん家こむぎ」の一杯ではそんなことは微塵も感じなかった。「きたほなみ」は「きたほなみ」で改良が進んでいるのだろう。その証拠に、最近では香川県内の有名店でもきたほなみを使う店が増えたという。北海道が「うどん王国」になる日も、そう遠くないのかもしれない。

 

***** 2024/9/1 *****