釜玉に似て非なり

通常、うどんは釜で茹で揚げた直後に冷水で締める。こうすることで表面のぬめりが取れると同時に、麺のコシが格段にアップする。

だが、釜揚げうどんの場合は、この「水で締める」という工程がない。釜から茹で揚げて、そのまま客の前に出される。なので、うどんは幾分柔らかめで、麺自体の余熱で延びるのも早い。だが逆に小麦の風味はいっそう際立つ。その刹那的な美味さを味わうなら、釜揚げうどんに玉子を落としただけのシンプルな釜玉をおいてほかにあるまい。

今日は神保町の人気店「丸香」で久しぶりに釜玉を頼んでみた。

多くの店の釜玉がそうであるように、注文してから10分ほど待たされる。茹で揚げを提供する以上、これはやむを得まい。しかしごく稀に、茹で置きの麺をお湯にくぐらせてから丼に移し、その上から生卵をポイとかけて「ホラよ」と出される店に遭遇することもある。これはいただけない。釜玉は月見とは違う。

ところで、この釜玉をテレビや雑誌などが取り上げるに際し、「カルボナーラ風うどん」と紹介されることが多いような気がするのだが、これは果たして正しい表現なのであろうか。

確かにどちらも玉子を使った麺料理には違いあるまい。だが、あくまでも麺の美味さ際立たせるために使われるのと、チーズや黒胡椒などと織りなす濃厚かつパンチの効いたソースのために使われるのとでは、やはり終着駅が違うような気がする。

麺料理にこだわらなければ、むしろ「玉子かけごはん」に近いのではあるまいか。湯気があがる炊きたてのご飯に生玉子を落として、醤油をひと垂らし。純白から黄金色に染まった米粒の艶。ふんわり炊けたご飯に絡む濃厚な玉子の甘さ。いずれも釜玉に通ずるものがある。どちらも一気に掻き込むのがいちばん美味い食べ方であることは言うまでもない。

国道36号線を苫小牧から西に向かい、社台牧場を過ぎ、さらに白老ファームをも過ぎたあたりを右の測道に入ったところに「白老たまごの里マザーズ・よこすと食堂」はある。1932年創業という歴史を持つ北海道種鶏農場が経営。文字通り「卵の里」だ。

もともとスイーツで評判になった店である。中でも1番人気はシュークリーム。焼き上がりを待つ行列ができるほどの人気だったが、最近では自慢の玉子を使った親子丼や幌加内蕎麦なんかも人気らしい。

ただ、私がハマったのは「卵かけご飯」。黄身と白身がぷっくり盛り上がる新鮮な卵を割り、一気呵成に箸で溶いて、湯気の立ち上る白いご飯に流しかけ、専用の醤油を垂らして、しかるのちに一気にかき込む。美味い。あたりまえだ。しかし、これはカルボナーラとは違う。

ちなみに大井競馬場内の「つるまるうどん」では期間限定で「カルボナーラうどん」というメニューを提供している。上の写真がそのビジュアル。釜玉とは似ても似つかない。味もどちらかと言えばグラタンだった。せめて「バター釜玉」に醤油ではなく黒コショウを振って食べればカルボナーラに似るだろうが、釜玉を喩えるならばやはり玉子かけご飯の方が相応しい。あー、こんな話を書いていたら玉子かけご飯が食べたくなってきた。今日10月30日は「たまごかけご飯の日」だそうだ。

 

***** 2024/10/30 *****