今日も日比谷「Gate.J」で調べもの。お昼は隣のビルの地下街にある「バルボア」とした。雨だというのに、いや雨なればこそか、いやいやそもそも天候なども関係なしに今日も行列ができている。
茹で上がった極太麺のスパゲティーを、肉や野菜などの具材と一緒にフライパンで炒める「ロメスパ」の人気店。人気はナポリタンだが、焼きカルボナーラや醤油アサリも捨てがたい。でも、たまには食べたことのないメニューにしよう。それで券売機の下の方に「ぼっかけ」というボタンを発見した。
「ぼっかけ」とは、関西のお好み焼きの具によく使う牛スジとコンニャクを甘辛く和えたものの俗称。そのルーツは神戸市長田区にある。当地のお母さん方の間で「安くて、美味しくて、一度作っておけばいつでも食べられる」と広まった。いわば長田版おふくろの味。お好み焼き焼きそばはもちろん、カレーやうどんの具材として幅広く使われている。だがしかし、私も3年ほど関西圏で暮らしたばかりが、スパゲティーにぼっかけという組み合わせはついぞ聞いたことがない。

実際食べてみたると、塩ベースの味付けの麺にぼっかけの甘辛さが絶妙に絡み合ってなるほど美味い。スジ肉の脂味をまとった太麺はもちもちと弾力豊か。時折感じられるコンニャクのクニャッとした歯触りも食べるものを飽きさせない。関西の粋を集めたような一皿。常連と思しき隣の客も注文しているところを見れば、その人気ぶりも頷ける。
「ぼっかけ」の語源は「ぶっかけ」にあるらしい。つまり「ぶ」が「ぼ」に訛ったというわけ。そういう意味では、具材をよく混ぜて食べるタイプの料理の具材に向いていそうだ。だからカレーやお好み焼きに入れると旨くなる。ならば「混ぜ麺」にも合うはずだ。パスタに合って中華麺に合わぬことはあるまい。それを出す店が赤坂にあると聞いて夜はそこに向かった。

コシのある太麺の上には、刻み海苔、天かす、青ネギ、そしてぼっかけ。器の底には濃い目のタレが潜んでいる。そこに別添えの生卵を割り落として、卵とタレがまんべんなく麺に行き渡るようにひとしきり混ぜたのち、やおら麺を啜ってみた。悪くはない。タレはぼっかけよろしく甘辛く、とても濃い味付けなのだが、卵がそれをマイルドにしてくれている。しかし、よくよく見たらコンニャクの姿がない。これじゃあ「ぼっかけまぜそば」ではなく「牛スジまぜそば」じゃないの?
慌てて周囲を見渡すと、屋号は「牛スジまぜそば」となっており、店内のどこにも「ぼっかけ」の文字は見当たらない。ならばコンニャクがなくても間違ってはいないか。しかし、店の公式サイトは「本家ぼっかけまぜそば」とある。もうわけが分からん。
まあ、「ぼっかけ」に厳密な定義など野暮なのであろう。しかしその独特の語感と相まって、特別なイメージが脳内の奥深くまで根を張ってしまっているので、個人的にはこれを「ぼっかけ」とは認め難い。ならば西葛西駅にぼっかけ焼きそばで有名な「長田本庄軒」がオープンしたらしいから、そちらに行ってみることにしよう。「長田」を屋号にする以上、本場ならではのこだわりがあるはずだ。
***** 2024/7/12 *****