京成杯の呪い

2019年に亡くなった大種牡馬キングカメハメハはこれまで産駒がJRAで通算2230勝。重賞も144勝をマーク。ディープインパクトサンデーサイレンスに次ぐ3位の記録を挙げている。ラストクロップは現6歳世代だから重賞150勝の大台到達は難しいかもしれないが、それでも暮れの有馬記念には3頭もの産駒を送り込んだ。まだまだ存在感を失っていない。

2004年 NHKマイルC キングカメハメハ 安藤勝己

競走馬としてのキングカメハメハの現役期間は10か月間に満たなかった。その短い間に8戦7勝の成績を残して引退。NHKマイルカップ日本ダービーの“ニ冠”が光る一方で、唯一の敗戦を喫したのが今週の京成杯である。

2004年の京成杯。1番人気に推されたキングカメハメハは、この時季の3歳馬としては出色とも言える2分0秒0で中山の2000mを乗り切った。しかし、優勝馬フォーカルポイントの勝ち時計は驚愕の1分59秒2。キャリア3戦目と若かったキングカメハメハは異例の高速馬場に手こずって3着と取りこぼした。このレース内容を見れば、皐月賞向きではないと判断されても不思議ではない。逆に、もしこの京成杯を勝っていたら、NHKマイルCからダービーの「変則二冠」は達成されなかった可能性もある。

ただし、京成杯でも能力の片鱗は見せていた。手綱を取ったバルジュー騎手は負けたにもかかわらず「間違いなくチャンピオンの器」と賞賛を惜しまなかったのである。けだし慧眼と言うほかはない。

思い返せば、安藤勝己騎手で勝った新馬戦も、武豊騎手が跨った2戦目のエリカ賞も、再三気合を入れられながらの勝利だった。いずれも半馬身差。圧勝と呼ぶにはほど遠い。それでも最後の脚には目を見張るものがあった。「いつもちょっとしか競馬をしない」と苦笑いを浮かべていたのは、管理していた松田国英調教師である。スタートから本気で走りさえすれば、5馬身差独走のNHKマイルCや、驚異のレコードタイムで走り抜けたダービーくらいのパフォーマンスは期待できるだろう―――。そんな確信めいたものを、バルジュー騎手はこの京成杯で感じ取った可能性はある。

2004年 日本ダービー キングカメハメハ 安藤勝己

種牡馬となったキングカメハメハは12頭の産駒を京成杯に送り込んだが、(0,4,2,6)と父としても京成杯を勝つことはできなかった。同じ中山の2000mが舞台の皐月賞弥生賞中山金杯は勝っているのだから、京成杯だけダメな理由が分からない。しかも、そのキングカメハメハの後継種牡馬であるロードカナロアルーラーシップドゥラメンテの産駒たちや、母系を通じてキングカメハメハの血を受け継ぐ馬たちも京成杯を勝てないでいる。こうなると京成電鉄の呪いや成田山の祟りを疑いたくもなろう。

インターポーザー(母の父ルーラーシップ
コスモストーム(母の父キングカメハメハ
センツブラッド(父ルーラーシップ
パッションリッチ(父ドゥラメンテ

今年の京成杯登録馬でキングカメハメハの血を受け継ぐのはご覧の4頭。馬券検討の際に余計なことを考えるのも面倒なので、今年あたりアッサリ勝ってもらえないだろうか。

 

***** 2025/1/15 *****