ここへきて東京は2月らしい寒い日が続いている。記録的な暖冬はどこへやら。しかしこういう時こそ鴨を食べて冬のありがたみを噛み締めたい。まずはオーソドックスに神保町の「静邨」で鴨せいろ。写真のせいろはサイズが小さく見えるが、2枚重ねなのでご安心を。

猟期が冬に限られるマガモと違い、アイガモの肉は年間を通じて流通している。それでも脂が乗って旨味を増すのはやはり冬。脂肪が落ちてアッサリしたマガモを好むのがツウといわれればその通りなのかもしれないけど、この季節、鴨の脂が浮いた濃い目のつゆに潜らせて啜る蕎麦のありがたさに勝るものは、あまり思い浮かばない。
鴨と合わせる麺は蕎麦が一般的だが、最近は中華麺に合わせる鴨つけ麺も流行っているようだ。御徒町のラーメン「鴨to葱」は、鴨と葱だけから取ったダシをベースにした特性鴨つけ汁で、つけ麺を味わうことができる。脂が浮いたちょいと濃い目の鴨汁は、鴨独特のコクと旨味がぞんぶんに浸み出ている。ほのかに香る柚子の風味。麦の香り立つオリジナル麺に、この鴨汁がまたよく絡む。

鴨に合う意外な麺は中華麺に限らない。飯田橋のきしめん専門店「きしめん尾張屋」では、きしめんの鴨南蛮を味わうことができる。ウインズ後楽園から歩いても10分程度。歩いて冷え切ってしまっても、鴨の脂が身体を温めてくれるから安心だ。また鴨肉に鉄分が含まれることは周知の通り。ウインズで思わぬ大敗を喫し、貧血で倒れる寸前になっても、鴨を食べさえすれば大丈夫。幅広の麺全体に鴨の脂をまとった平打ち麺をべろべろっと啜れば、きしめんの概念が覆される思いがする。

―――と、ここまで蕎麦、中華麺、きしめんを食べてきたが、このブログはサブタイトルで「競馬と饂飩の日々」を謳っている。肝心のうどんはどうした?
実は先週の東京競馬場で「鴨せいろうどん」を食べようとフジビュースタンド西端3Fの「梅屋」に向かおうとしたところで衝撃の事実を知った。なんと梅屋の看板がない。聞けば1年以上前に閉店したのだという。しょっちゅう近くを通っているのに、ぜんぜん気づかなかった。

メモリアル60から馬場内まで、競馬場内を隈なく捜し歩いてはみたものの、鴨を出す店は見つからない。もはや諦めるしかないのか。武蔵野の木立を眺めながら蕎麦湯で割った鴨汁をチビチビ飲む贅沢は他に喩えようがなかった。これだけ蕎麦・うどん店が軒を並べる競馬場に、なぜ鴨せいろや鴨南蛮が無いのであろうか。とどのつまりは競馬場で「カモ」が禁忌ということに尽きるのであろう。だがしかし、それでも私は鴨を食べたい。
***** 2025/2/5 *****