伊丹空港から阪神甲子園駅まで直通リムジンバスが運行しているとは知らなかった。伊丹空港からわずか25分。730円で甲子園球場に横付けされるのだから野球ファンにとってはありがたい。運行しているのは阪神バス。とうせなら阪神甲子園球場だけでなく、阪神競馬場に向けても運行してもらえないだろうか。開催日なら一定の需要はありそうなものだが。

阪神バスに乗って阪神甲子園球場へ行き、阪神甲子園駅から阪神電車に揺られて阪神尼崎駅へ。駅構内の「阪神そば」で肉うどんを啜ってから、電車を乗り換えて阪神2軍の新球場「SGLスタジアム」を見学。再び阪神電車に乗って阪神野田駅を降り、ホテル阪神に宿を取った。そして翌日は朝から阪神競馬場である。これでメインが阪神カップなら言うこと無しだが、さすがにそうもいかない。

筆者はコロナ禍の3年間を大阪で暮らしたが、競馬以外でこれほどまで「阪神づくし」の時間を過ごしたことは無かった。阪急と京阪ばかり。競馬場に通い詰めれば自然とそうなる。しかし落ち着いて考えれば、阪神電車で阪神競馬場に行けないというのは、なんとなく腑に落ちない。阪神電鉄の大阪梅田駅では「競馬場はどこで降りるんや?」という問い合わせがいまだにあるそうだ。そういう乗客には阪急電車の乗り場を教えてあげることになるのだが、もしこれが平日なら姫路競馬場という可能性も捨てきれない。阪神の梅田からは山陽姫路まで直通特急が運行している。JR新快速に比べて30分以上余計にかかるが、運賃は阪神の方が170円安い。

それにしても阪神尼崎駅の「阪神そば」は美味かった。よくある駅の立ち食い店と侮ってはいけない。聞けば1966年12月の創業だという。となれば今年59回目を数えるフィリーズレビューとほぼ同時に産声を挙げたことになる。ダシの味にうるさい関西人の舌を相手に半世紀以上も暖簾を守れること、そのこと自体が美味さの証に違いない。それが甘く炊かれた牛肉と絶妙にマッチする。ぜひ仁川駅構内にも出店してもらえないだろうか。しかし、阪急の駅に「阪神そば」の暖簾を掲げれば、また新たな混乱を生むかもしれない。

そも阪神競馬場の前身である鳴尾競馬場は甲子園の近くにあった。それが「阪神競馬場」と改称されたのが1937年のこと。海軍に接収される1943年までの短い期間とはいえ、阪神競馬場は阪神沿線に存在していたことになる。

そんなかつての「阪神競馬場」の跡地は阪神甲子園駅からバスで10分程度の距離にある。甲子園での試合が始まる前のわずかな時間を突いてぶらっと訪れてみた。再開発されたばかりとおぼしき団地に囲まれた公園の一角。交番の隣にひっそりと記念碑が経っている。そこに刻まれた競馬場の名は「鳴尾競馬場」だが、数年間だけ「阪神」を名乗った時期があったことは間違いない。かつて蹄音が響いたであろうその地は静寂に包まれていた。
***** 2025/3/10 *****