消えるレース名、変わるレース名

来年から名称が変更になるレースは米子ステークスだけではない。

中でもアーリントンカップが「チャーチルダウンダウンズカップ」に変わるというのは、副題ではなくレース名そのものが変わってしまうという点でインパクトが大きい。アーリントンカップ阪神競馬場とアーリントン競馬場の提携締結を機に1992年に前身のペガサスステークスから改称されたが、33年でその歴史に幕を閉じることになる。アーリントン競馬場自体が実質的に廃止されている以上、そもそもレース名の再変更は規程路線だった。

副題や冠名でも気になる変更がある。産経新聞社が「夕刊フジ」を来年1月末で休刊すると発表した。電子版や公式サイトも休止するというから事実上の廃刊と見る向きは多い。

2014年 夕刊フジオーシャンS スマートオリオン 横山典弘

同紙は1969年創刊。「夕刊フジオーシャンステークス」が「オーシャンS」に変更されることはJRA発表にあった通りだが、秋の京都で行われるリステッドレース「夕刊フジオパールS」も変更は免れない。ちなみにトウシンマカオは東西ふたつの夕刊フジ社杯を制したオレンジ色のニクい奴だ。夕刊フジ編集部から特別賞でも贈りたい。

2022年 夕刊フジオパールS トウシンマカオ 鮫島克駿

競馬の冠化は朝日新聞と読売新聞の2大全国紙が先鞭を付けた。1949年のことである。戦後の混乱期に、新聞がいち早く競馬のイメージアップに協力したのは、当時の競馬が国営だったせいもあるだろう。その流れで今もJRAには新聞名を冠したレースが数多く行われている。

一方で新聞業界は斜陽化が叫ばれて久しい。とくに夕刊紙やスポーツ紙は苦戦が続いている。2009年には夕刊紙「内外タイムス」の廃刊に伴い、内外タイムス杯が消えた。さらに一昨年から昨年にかけては「道新スポーツ」と「西日本スポーツ」が休刊。これを受け函館の道新スポーツ賞と札幌の道新スポーツ杯、そして小倉の西日本スポーツ杯が相次いで姿を消している。

夕刊フジ廃刊の影響は冠名からの削除だけで済んだが、今後廃刊ドミノが進めばレース名そのものを変える必要が生じるかもしれない。最近のレース名変更をあらためて見れば、そんな新聞業界の将来を見越してあらかじめ手を打っているようなフシさえ感じる。レース名変更の動きは今後ますます進むに違いない。

今週末に行われる「アイルライドトロフィー府中牝馬ステークス」は副題の方が生き残るという特殊なパターンになった。しかし「アイルライドトロフィー」というレースは2016年まで特別レースとして行われてきたから、ある意味「復活」でもある。なんだかややこしい。

1997年 アイルランドトロフィー トーヨーレインボー 松永昌博

そもそも、府中牝馬ステークスにしても1991年までは「東京タイムズ杯」の名で行われていた。ところが日刊紙「東京タイムズ」が1992年に廃刊になったため、急遽「府中牝馬ステークス」へと変更された経緯がある。それが「アイルランドトロフィー府中牝馬ステークス」となり、来年からは「アイルランドトロフィー」へと変わる。かつての「ニュージーランドトロフィー4歳ステークス」が「ニュージーランドトロフィー」に改称されたのと同じパターン。しかしあまりにコロコロ変われば、レースに対するファンの思い入れや印象の定着を阻害するおそれもある。一定の節度は必要であろう。

 

***** 2024/10/8 *****