うどんの功徳

昨今では和洋中あらゆる食事を楽しむことができる競馬場だが、そばとうどんの人気はいまも根強い。安いだけでなく、レースとレースの合間に立ったままサッと食べることができるからであろう。なにせ競馬ファンは忙しい。東京競馬場内には「梅屋」や「馬そば深大寺」といったそば・うどん専門店が8店舗も営業している。ジャンル別ではいまだに最大派閥だ。

手軽に安く食事を済ませることができるという点で重宝されるのは駅の立ち食いそばと同じ。しかし、競争原理が働く競馬場内の立ち食いそば・うどんは、駅のそれに比べてレベルが高いように思う。

もとより私はうどん派だが、うどんは「つるつる(鶴鶴)噛め噛め(亀亀)」で縁起が良いとされ、勝負事を前にしたメニューとしても理にかなっている。ちなみにそばの擬音は「ずるずる」が一般的。直線で力尽きた馬が後退するようなイメージからすれば、忌避すべきか。

しかし、うどん好きにとっては旗色が悪い昨今でもある。

うどんのように消化吸収の早い炭水化物はインスリンの分泌を増やし、脂肪の蓄積を促すという点でメタボになりやすいのだそうだ。ダイエットにおいても、全体のカロリーを減らすよりも、炭水化物を減らすことが大切というのが今では常識となりつつある。しかも、消化吸収の速さだけで比較すれば、うどんはそばの1.5倍。肥満の敵は肉と油と叩き込まれてきた身に、今さら「とんかつよりうどんの方が太りやすい」などと言われても、ただちに「はいそうですか」と受け入れられるものではない。

そんなことを考えつつオークス東京競馬場を歩いていると、フジビュースタンド1階東に見慣れぬうどん店を見つけてしまった。聞けば先月オープンしたばかりという。西麻布にあるダイニングバー「夜寄」の経営にかかる一軒らしい。イチ押しのチキンカツカレーうどんを注文すると、カレーうどんの上に巨大なチキンカツが2枚も載って出て来た。このチキンカツがとにかく柔らかくて美味い。それと合わせるカレーうどんも、もちろん美味い。

肉+油+炭水化物の組み合わせが肥満まっしぐらだとしても、このビジュアルを前にそんな悠長なことを言ってられるか。チキンカツにかぶりついたのち、一気呵成にうどんを啜り上げる。もはや、インスリンなどいくら分泌されようが構わぬ.

返す刀でフジビュースタンド4階「馬そば深大寺」で鶏うどんを引っ掛けてやった。こちらの店は「そば」を屋号にしているが、実はうどんも美味いと評判だ。柚子胡椒を添えて啜るうどんの味は、九州で食べるかしわうどんを彷彿とさせる。

しっかり食べて臨んだオークスは、珍しく馬券が当たるという激レアな出来事にも恵まれた。これも己のメタボを顧みず、うどんへの信心を守り通した功徳と言えよう。鶏(取り)、カツ(勝つ)、そして鶴と亀のパワーは凄い。

 

***** 2025/5/26 *****