平場のお宝を見逃すな

先週土曜の武蔵野ステークス川田将雅騎手のエンペラーワケアが1番人気に応えて1馬身差完勝。2つ目の重賞タイトルを手にした。

2024年 武蔵野S エンペラーワケア 川田将雅

直線で完全に行き場をなくしたときは万事休すと思われたが、慌てず騒がずジッと我慢。残り150mの地点で前を行く2頭の間にわずかな隙間が生まれたのを見逃さなかった川田将雅騎手の判断が見事なら、それに応えたエンペラーワケアも素晴らしい。もともと実績のない1600mへの距離延長がテーマでもあったが、スタートから1400mを過ぎてなおあれだけの脚が使えるなら御の字であろう。ただし、1分36秒0の勝ち時計はこの10年でもっとも遅い。期待が大きかったぶんだけ若干の物足りなさも残る。

インパクトという点ではこの日行われた8レースの方が大きかったかもしれない。同じダート1600m。古馬2勝クラスの平場戦でありながら興味深いメンバーが揃っていた。

プリーミー T・マーカンド

南関東7戦7勝の戦績を引っ提げてJRAに転入してきたプリーミーはノーザンファーム産の5歳牡馬。しかし生まれるのがあと5日遅ければ「4歳」だった。つまり12月生まれである。それで地方デビューを余儀なくされた。3歳9月のデビュー戦は10馬身差の圧勝。実質的には2歳馬がデビュー戦で既走の3歳馬相手に大差勝ちしたに等しい。筆者が色めいたのも無理はなかろう。ひょっとしたらGⅠレベルかも……。そんな淡い期待に対する答えがもうすぐ出る。

それだけではない。ハープスター産駒のライラスターを筆頭に、グラップユアハートの孫・アッチャゴーラ、エリンバードの孫・エリンアキレウスなど、かつての名牝の子や孫が顔を揃えている。そんなメンバーの中にあって1番人気に応えて圧勝したのはウィンドフォール。その母は道営と南関東で重賞6勝の名牝ノットオーソリティだ。

2014年 ロジータ記念 ノットオーソリティ 御神本訓史

ノットオーソリティには不運のイメージがつきまとう。圧倒的1番人気を背負いながらゲートで躓き5着に敗れた東京2歳優駿牝馬。発走直前のアクシデントで除外の憂き目を見た桜花賞。スマートバベルの出し抜けを許した東京プリンセス賞。「オーラが違う」と絶賛した川島正一調教師が思い描いたクラシック戦線にはならなかったが、それでも3歳シーズンの最後はロジータ記念、シンデレラマイルと重賞連勝で締めてみせたから立派だ。ウィンドフォールは母からその類い稀な才能と毛色を受け継いでいる。これでデビューから3戦3勝。クラスが上がって後続に7馬身差は凄い。GⅠレベルはむしろこっちではあるまいか。

2024年11月9日 東京9R ウィンドフォール 木幡巧也

注目すべきは時計。勝ち時計1分36秒3は武蔵野Sのエンペラーワケアにコンマ3秒足りないだけ。上り35秒5はエンペラーワケアのそれを1秒0も上回っている。

エンペラーワケア陣営は早くもフェブラリーS直行を明言した。そこで最大のライバルになるのはレモンポップでもペプチドナイルでもなく、ウィンドフォールかもしれない。2001年のノボトゥルーは新年を3勝クラスの条件馬で迎えながら、そこから一気の3連勝でフェブラリーSを制した。2か月で番付逆転もあるのが競馬だ。

  

***** 2024/11/12 *****