【冬に美味しい⑧】鉄板スパゲティ

仕事で大宮へ行ったついでにJR大宮駅構内のフードコート「大宮横丁」に立ち寄ってみた。60年代風の街並みが再現された飲食エリアには、全国各地のご当地グルメを提供する屋台風の店舗がズラリと並ぶ。椅子やテーブル、看板やサンプルケースまで昭和レトロ風という徹底ぶりだ。

そのサンプルケースに「大宮ナポカツ」というメニューを見つけた。さいたま市内の大学で昭和の4年間を過ごした筆者ではあるが、「大宮ナポカツ」なんて食べたことも聞いたこともない。こうなれば注文するほかなかろう。

受け取った一皿はこんな感じ。熱々の鉄板皿の上にナポリタンスパゲティが盛られ、その上にトンカツがドドンと鎮座。そのトンカツにはソースがかけられている。まあ「ナポカツ」というネーミングからすれば驚くことはない。むしろ「これの何が大宮?」という謎が深まった。

すると同行者の一人が口を開いた。「これって大宮じゃなくて釧路の名物ですよね」

釧路のレストラン「泉屋総本店」が発祥とされるスパカツも、スパゲティとトンカツが鉄板皿に載せられて提供される。その歴史は半世紀以上に及ぶというから歴史も深い。「温かさ」自体がご馳走だと感じる釧路ならではの文化と言えよう。ともあれ目の前の大宮ナポカツとほとんど同じ。違うのは大宮がナポリタンであるのに対し、釧路はミートソースであることだ。写真は新千歳空港「ニュー三幸」の釧路名物スパカツ。

それに対して意義を唱えたのは別の同行者である。「いや、鉄板スパゲティはそもそも名古屋が発祥だ」と反論。こうして「鉄板スパゲティ論争」の火ぶたは、突然に切って落とされた。

アツアツの鉄板の上に溶き卵を回しかけ、そこにケチャップで炒めたスパゲティを載せた鉄板スパゲティは、名古屋市東区の喫茶「ユキ」が考案したのだという。名古屋で「鉄板ナポ」と言えば、すべてこのスタイルなのだそうだ。

「ふむふむ」と適当に相づちを打ったりしながら、私はもぐもぐとナポリタンを食べ、カツを口に運んだ。正直「どこの食文化か?」などという議論にはさほど興味はない。東京生まれの悪い癖かもしれない。

ステーキやハンバーグの付け添えに、ちょっとしたナポリタンが付いてくることがある。じゅーじゅーと音を立てている鉄板に載せられた、あのナポリタンの味を知っていれば、「ナポリタンそのものを鉄板で出したら美味しいんじゃないか」と誰でも気づきそうなもの。別に特別なことではない。たしか愛媛の西条でも、鉄板スパゲティで町おこしを計っていたのではないか。

その盛りつけの美しさから「モンブランスパ」の異名を持つ大井町「ハピネス」のスパゲティでも昔から鉄板皿が使われている。その効果を味わうならナポリタンよりカレースパがおすすめ。ぐつぐつと沸騰するカレーソースをスパゲティに絡め取り、はふはふと口に運ぶ時のあの期待感と緊張感たるやたまらないものがある。熱くて、そして辛い。額に汗がにじむ。水をごくごくと飲み干して、もう一口。熱い。辛い。でも、美味い。あぁ、こうして書いていたら、無性に食べたくなってきた。次の大井開催はいつだ?

要は美味ければそれで良いじゃん、ということ。鉄板は食べれませんしね。

 

***** 2025/2/26 *****