今日の阪神牝馬Sはゴール寸前で3頭が横に並ぶ大激戦。写真判定の結果はサフィラがハナ、ハナの着差を制したが、3頭のタイムはいずれも1分32秒8だった。JRAでは100分の1秒単位で走破タイムを計測しているが、成績として発表されるのは10分の1秒まで。目に見える着差があっても同タイムてむあることは珍しくない。

平昌五輪でこんなことがあった。ボブスレー男子2人乗りの最終第4戦で、カナダとドイツの全4レースの合計タイムが3分16秒86で並び、「同タイム優勝」が実現したのである。100分の1秒の速さを競うボブスレーでは珍しい。
一方でスピードスケートの男子5000mの第9組でスタートしたカナダのブルーメン選手とノルウェーのペデルセン選手は、ほとんど並んでゴール。速報タイムも6分11秒61と、100分の1秒までピタリ一致した。
それを見て「同着だ!」と叫んだのは私。だが、ボブスレーと違ってスピードスケートでは、100分の1秒まで同タイムの場合、1000分の1秒単位のタイムで着順を決めるらしい。結果ブルーメン選手が銀メダルでペデルセン選手が銅メダル。その差わずか0.002秒。距離にして3センチほどだという。5000mも争ってたった3センチの差でメダルの色が変わったのだから、ペデルセン選手としてはやるせない。
それにしても1000分の2秒である。我々凡人は普段の生活でその「時間」を意識することはまずない。こうなると、5000mを6分11秒で滑るアスリートの強靭な体力に驚くよりも、その計測技術に驚いてしまう。人間同士の究極の争いの舞台でありながら、実際に目にしているのは計測技術の進歩の争いだったりする。
計測機器の発達によって五輪での「同着」が減ったのと同じように、競馬においても判定写真技術の発達に伴い同着は減る傾向にある。1996年のスプリンターズSのように、わずか1センチの差をあぶり出すことも不可能ではない。驚いたのは先日のドバイターフ。主催者側はソウルラッシュとロマンチックウォリアーの着差を「100分の1馬身」としていたが、海外競馬専門メディア「アイドル・ホース」公式Xは判定写真を解析した結果として、両馬の着差は時間にして1万分の6秒。長さにしてわずか8ミリだとした。1万分の6秒を意識したのは初めて。とはいえ、それを時間として認識できるはずなどない。

しかし私が驚いたのは、明るさに制約があるナイター開催でありながら、ほんのわずかな差を炙り出したのその写真技術にである。かつてはここまで精密な判定はできなかった。安易な同着判定には当然のようにファンから不満の声が挙がる。そこで戦前には1着同着の場合、再レースで雌雄を決することもあった。相撲にも「同体の場合は取り直し」というルールがあるが、感覚としてはそれに近い。
1935年11月23日、阪神競馬最終レースを同着で分けたヨシモアとムーンライトは、1時間後に再戦し、今度はヨシモアが1馬身半の差で決着をつけた。だが、極度の疲労が祟ったのか、この一戦を最後に両馬とも引退に追い込まれている。人間なら相撲の取り直しかもしれないが、やはり馬には勝手が違ったようだ。やはり同着は同着のままで良い。私はボブスレーのルールに安堵感を覚える。

来週は皐月賞。今年の出走馬のうちアロヒアリイ、マジックサンズ、ピコチャンブラックの3頭は、いずれも名牝バレークイーンの末裔。つまり3頭とも2007年の皐月賞馬ヴィクトリーの近親にあたる。ヴィクトリーと言えば、1949年に「皐月賞」の名で行われるようになってから唯一のハナ差での皐月賞優勝馬。今年の皐月賞は久しぶりに写真判定の出番がありそうな気がしてきた。
***** 2025/4/12 *****