明日は船橋で日本テレビ盃。JBCクラシック、チャンピオンズカップ、東京大賞典へと続く秋のダート王道路線の開幕戦であると同時に、最近では米BCの前哨戦にもなっている。今年もフォーエバーヤングがBC前のひと叩きで登場。JpnⅡにしておくのはもったいない。
「NHKマイルカップ」「フジテレビ賞スプリングS」「テレビ東京賞青葉賞」など、JRAの重賞レースに名前が登場するテレビ局は少なくない。そんな中にあって日本テレビが、なぜJRAではなく船橋競馬の重賞に社杯を提供しているのか? それを不思議に思っている方もいるかもしれない。
というか、日テレの社員さんからそういう質問を受けたのである。それだけ不似合いということであろう。
ことの始まりは、戦後まだ間もない1953年。当時「金の鞍」という名称で行われていた古馬2000mの重賞レースを、日本テレビが実況中継したことに端を発する。地方競馬のテレビ中継は初めての試みだった。中継を担当した佐土一正アナウンサーは、この年入社したばかりの日テレアナウンサー第1期生。後に力道山のプロレス中継で名を馳せるレジェンドとはいえ、新人アナが3時間余りの放送時間を繋ぐのだから、さぞ苦労したに違いあるまい。なにせ当時はテレビ放送事業自体が黎明期である。
ともあれ、この翌年から「金の鞍」は「NTV盃」と名を変えて行われるようになった。以後70年あまり。テレビ中継こそなくなったものの、日本テレビ(NTV)の冠は残されたままだ。
1998年にはJRAとの交流重賞となり、距離も1800mに短縮された。そこに出走してきたのが地元の雄・アブクマポーロ。川崎記念、ダイオライト記念、マイグランプリ、かしわ記念、帝王賞と5連勝中の同馬は、日本テレビ盃のあとはJRAの毎日王冠から天皇賞というローテが発表されていた。単勝オッズは100円の元返しだから勝つのは当然。その勝ち方が注目されていたと言っても過言ではない。
結果は想像を上回る圧勝であった。JRAのGⅡ勝ち馬(ウインドフィールズ)やJRAダート重賞3勝馬(ワイルドブラスター)が、いずれも55キロに留まったのにし、ただ一頭58キロを背負わされながら後続に8馬身差である。力が違ったとしか言いようがない。これなら毎日王冠も好勝負が期待できそうだ。そう思ったのもつかの間、あまりの強さに「この能力をダート以外で使うのはもったいない」として、陣営は毎日王冠回避を表明した。次走の南部盃ではメイセイオペラに敗れたものの、グランドチャンピオン2000と東京大賞典を勝ったアブクマポーロは、この年のNAR年度代表馬に選ばれている。
ちなみに、この年の毎日王冠を勝ったのはサイレンススズカ。エルコンドルパサーやグラスワンダーを相手に、圧倒的なスピード能力で逃げ切ったあの伝説のレースだ。そこにアブクマポーロも出走していたかもしれない 。それを思うと、今でも複雑な気持ちになる。それというのも、日本テレビ盃のアブクマポーロがあまりに強すぎたから。だからこそ余計に複雑なのである。
***** 2025/9/30 *****