ドジャースの大谷翔平選手がメジャー史上初の同一シーズン50本塁打50盗塁、いわゆる「50-50」を達成した。今日の試合ではさらに記録を伸ばして51-51に到達している。それでも「50-50を達成」と報じるメディアに、ほんのわずかながら違和感を覚えた。大事なのは「51」ではなく「50」の方らしい。
つくづく不思議な記録だと思う。今日の試合で誰かの記録を抜いたわけでもない。記録更新という観点では43-43を達成した時点で1998年にA・ロドリゲスが達成した記録を抜いたとされた。しかしA・ロッドの記録は厳密には42-46である。その時点で大谷選手は盗塁が3つ少なかった。
それでもこの記録は本塁打と盗塁を同じ数字で表すことに重きが置かれる。昨シーズンにアトランタブレーブスのアクーニャ選手が41-73というとてつもない記録を残したが、これも記録上は「41-41」に分類された。両方を足し算すれば100を超えるのだが、そういう問題ではないらしい。
結局は同時性の問題なのだろう。すなわち本塁打と盗塁に求められる能力が異なることの裏返し。その意味ではこれも立派な「二刀流」に違いない。彼はもともと、打って、投げて、しかも走れる三刀流の超一流プレイヤーだ。もはや「オールラウンダー」というありきたりの言葉では収まりきらないその類い稀な能力を、「50」というキリの良い数字で分かりやすく証明してみせた。そこにこの記録の価値があるに違いない。
競馬でも芝とダートや平地と障害の双方で活躍する馬を「二刀流」と呼んだりするが、これが「三頭流」となるとかなり限られる。芝と障害の重賞を勝ち、ダートのオープン特別を勝ったタガノエスプレッソくらいしか思いつかない。そう考えるだけでも大谷翔平選手の偉大さが分かる。

馬ではなく騎手の場合はどうだろうか?
騎手にとっては芝とダートにさほどの違いはないから、平地と障害の二刀流に限られる。その代表格といえば昨年引退した熊沢重文さん。異なるフィールドでGⅠという頂点を極めたそのキャリアは50−50の偉業にも匹敵すると思いたい。

ただ過去には三刀流の騎手もいた。調教師としてタケホープ、ナスノチグサ、テイタニア、テンモンらを管理した稲葉幸夫氏は、騎手時代に同日に行われた平地、障害、そして繋駕速歩の3種類のレースで勝利を挙げたことがある。繋駕レースはすでに廃止されているので、この「同日3種レース勝利」の記録が達成されることは二度とない。
このように「絶対に破られない記録」というものもたしかに存在するが、これは例外。多くの記録は破られる運命にある。果たして大谷選手はどこまで記録を伸ばすのか。未到の領域を独りで切り開く孤高の天才から、明日以降も目が離せない。
***** 2024/9/20 *****