22日の火曜日のこと、ネットに驚くべき記事が掲載された。文責はサンケイスポーツ。秋の天皇賞を勝った牝馬は、過去にトウメイとエアグルーヴの2頭しかいないというのである。
なるほど。ヘヴンリーロマンスがゼンノロブロイを破り、ブエナビスタがスミヨンの手綱で瞬く間に抜け出したあのシーンは天皇賞ではなかったらしい。ウオッカとダイワスカーレットの歴史的接戦は、きっと夢の中での出来事だったののだろう。しかし、それでも連覇を果たしたアーモンドアイは、さすがに夢幻ではあるまい。なにせあの衝撃から4年しか経っていないのである。
スポーツ紙はどこもネットにも記事を載せているが、そもそもその内容を私はアテにしていない。スポーツ紙だってタダのものにコストをかけるわけにはいかんのである。だからアーモンドアイの秋天連覇が無かったことにされたり、白老ファーム生産のラウダシオンの生産者が「社台ファーム」になっていても私は決して驚かない。ただ、事情を知らぬ人がこれを読んで社台ファームにお祝いの電話を入れちゃったりしたら、電話を受けた方は驚くだろう。
たとえタダの情報であっても、新聞社の題字を掲げている以上、一定程度の責任は免れない。何も知らない人が前出のネット記事を目にしてリバティアイランドの評価を下げて馬券を外してしまったらサンケイスポーツはとう責任を取るのだろうか。予想が間違うのは仕方ないが、過去の事実を誤って伝えることは、新聞社の信頼に関わる。
件の天皇賞の記事は半日ほどして修正されたのだが、その修正結果がまた微妙だった。「牝馬が1頭しか出走していない秋の天皇賞に限れば」という条件を付けて、無理やりつじつまを合わせたのである。
こう書かれると牝馬の成績というより、牝馬の出走頭数に論点がズレかねない。頭数が多ければ勝つ確率は上がる。当たり前だ。だから紅一点で勝ったトウメイとエアグルーヴは凄いのか。いや、ちょっと待て。トウメイにせよ、エアグルーヴにせよ、ほかに牝馬の出走馬がいたとしても勝っていたはず。彼女らの素晴らしいパフォーマンスと牝馬の出走頭数はまったく関係ない。

こんな苦しい修正をするくらいなら、いっそのこと記事を削除した方がまだマシだった。それでも消せない理由があったのだろう。仮に20年前の古い記事を使い回ししたのだとしても、競馬を知る人間ならば「直し」の必要性に気付きそうなものである。他紙に比べて競馬に力を入れているはずのサンケイスポーツがこの体たらくでは、スポーツ新聞業界はいよいよ危うい。

なぜこんなことが起きるのか。答えはシンプル。必要なチェックがなされていないから。ネットの情報なんてしょせんそんなもの。私はそう理解している。そのネット情報から答えを導き出す生成AIも同じであろう。

人間のやることに間違いは避けられない。だから問題はそのあとの対応に現れる。しかしネットの世界では間違いが間違いのまま放置されるケースも少なくない。その背景には、あとから直したとしても先の誤った情報が瞬く間に拡散してしまっていることへの諦めがあるという声も聞く。こうして情報の海の汚染は進んだ。このブログも汚染の片棒を担いでいるかもしれない。しかし少なくとも私は間違いを見つける度、せっせと直している。情報の海が汚れていては、せっかくの生成AI技術も宝の持ち腐れになりかねない。そろそろ新聞各社もネットとの付き合い方を考え直す時期に来ている。
紅一点のリバティアイランドは、単勝1番人気に押されたものの、まさかの13着に敗れた。この結果を受けて「やはり牝馬が1頭しか出走していない天皇賞秋で牝馬が勝つのは難しいのか」と思う人が多くいたとはとても思えぬ。敗因は彼女の「不機嫌」にあったとされているが、ひょっとしたら彼女もこのネットニュースを読んでしまったのではないか。私はそれを密かに疑っている。
***** 2024/10/27 *****


