福島から小倉へ

競馬が福島と小倉に行ってしまったので、久しぶりに競馬場に足を踏み入れない週末を過ごしている。昨年は開幕日の小倉に飛び、一昨年は大阪からラジオNIKKEI賞に駆け付けたことを振り返れば、なんとも味気の無い6月最終週ではないか。そんなモヤモヤした思いを抱えながら日本橋界隈を歩いていたら、こんな建物があることに気が付いた。

日本橋ふくしま館 ~ミデッテ~」は、いわゆる福島県のアンテナショップ。「ゆべし」も「ままどおる」もここで買うことができるし、奥のイートインスペースでは、周期的に福島の人気ラーメン店の本格的な一杯を味わうことができる。この日は西会津「坂新」さんが出店していた。

もちろん現地の楽しさには及ばぬが、競馬場に行ったところでエアコンの効いたスタンド内の机に座ったまま、ほとんどモニターを見て過ごすのである。自宅で「ままどおる」を食べながらグリーンチャンネルの中継を見るのと変わり映えしない。

そんな「日本橋ふくしま館」から1分も歩かぬ狭い路地に、一見してそれとは分からぬうどん店が営業している。「神田肉うどん」は、その名とは裏腹に小倉肉うどんを味わえる貴重な一軒だ。

小倉の肉うどんと聞いて、最近話題の「資さんうどん」を思い浮かべる方もいるかもしれない。しかしあれはどちらかと言えば博多のうどん。「どきどきうどん」の愛称でも知られる小倉の肉うどんは醤油と生姜で甘辛く煮込んだ牛ほお肉をつゆに入れ、麺とともに煮るのが特徴。麺は太めで四角のストレート。博多系の“ふわやわ”を想像していると、意外にしっかり歯応えがあって驚かされる。いや、それよりも初めての人が驚くのは真っ黒なツユだろうか。「資さんうどん」などに代表される博多うどんと決定的に異なる点だが、見た目ほどしょっぱくはない。脂と生姜の為せる業であろう。

独特の呼び名は、その脂っぽさが地元の方言で「どぎどぎ」(ぎとぎと)していたことにちなむ。戦後の小倉で生まれ、北九州全域で独自の進化を遂げてきたいわゆるソウルフードだ。あの博多華丸さんが最後の晩餐に「どきどきうどん」を選ぶほどだから、その味は折り紙付きであろう。

「神田肉うどん」の一杯はトロトロに煮込まれたスジ肉は本場と変わらぬ美味しさだが、麺は小倉よりは博多の柔らかさに近い。箸で持ち上げるとプツりと切れた。だがその柔らかい博多系の麺が、甘い脂がたっぷり乗った小倉系のダシをたっぷり吸い込むことで、旨さが増していることは間違いない。不思議とクドさを感じないのは、やはり大量の生姜の為せる業であろう。

小倉競馬場の周辺にも地元に愛される「どきどきうどん」の店がいくつも暖簾を掲げている。それを思い出したら小倉に飛んで行きたくなったが、函館記念はキミノナハマリアから、ラジオNIKKEI賞はビーオンザカバーから勝負して、いずれも撃沈。小倉への飛行機代を稼ぐには至らなかった。しばらくは神田の一杯をありがたく頂くしかないのであろう。

 

***** 2025/6/29 *****